アフリカ小僧、隠居日録

定年後の日常を、隠居所で気ままに書いてるブログです

山椒魚

井伏鱒二の「山椒魚」を読んだ。日本で教育を受けた人なら、誰もが知っている短篇小説だ。 小僧も、題名や大まかなストーリーは知っていた。要すれば、山椒魚が岩屋に閉じ込められて出られなくなる、そんなお話だ。岩屋とは、川などの岩にできた隙間、空間の…

平岡梓著「伜・三島由紀夫」を読む

平岡梓(ひらおか あずさ)は、作家、三島由紀夫の父親だ。その父親が、事件後、息子の生涯を一冊の本にまとめた。それが、文春文庫の「伜・三島由紀夫」である。文庫になる前、単行本としても出版されている。 事件とは、昭和四十五年(1970年)十一月二十…

街を歩いて古本を買う人生

植草甚一著「ぼくの読書法」(晶文社)を読んだ。植草甚一(1908年-1979年)は、欧米のミステリーや映画、ジャズを日本に紹介し続けた人だ。小僧が学生だった1970年代、街歩きと古本をテーマに魅力的なエセーを書き続けていた。 当時、植草甚一に憧れた若者…

古書店を愛した人々

関口良雄著「昔日の客」(夏葉社刊)を読んだ。著者は、大田区にあった山王書房の店主だった人。山王書房は、古書店、古本屋である。昔日とは「せきじつ」と読み、昔、お店に来たお客様の思い出などを書き留めた一冊である。 古書店主が書いた本はいろいろあ…

定食と古本

今柊二(こん とうじ)著、「定食と古本 ゴールド」という本を読んだ。「定食」も「古本」も、一九六〇年代、七十年年代に学生だった人間にとっては、注意をひく単語だ。 定食はともかく古本に関しては、当時の若者全てが関心を持っていたとは言えないだろう…

チボー家の人々

小津安二郎監督の「麦秋」の主人公一家は、北鎌倉駅を使っている。ところで、麦秋とは何か?5月下旬から6月の梅雨前の時期を意味するらしい。北鎌倉をはじめ関東では、最もすがすがしい時期である。勝手に秋をイメージしていた自分が恥ずかしい。 映画「麦…

検針員日記

「メーター検針員 テゲテゲ日記」を読んだ。必死に生きる中高年の日記シリーズの一冊である。住宅やビルなどに設置された電気メーターを確認し、電気消費量を知らせる紙を郵便受けに残してゆくのが、メーター検針員である。 受け取ったことのある人も多いと…

派遣添乗員ヘトヘト日記

「住宅営業マンぺこぺこ日記」を読んだら、かつて読んだ「派遣添乗員ヘトヘト日記」を再読したくなった。自宅の本棚から引っ張り出して読み始めたら、止まらない。一気に完読である。 発行は三五館シンシャ。中高年に人気のシリーズの一冊である。作者の梅村…

短気高齢者

七十才を超えて、せっかちになったと感じる。人生の先輩から聞いていた通りだ。街中でも、せっかちな高齢者、とりわけ男性の姿をよく見かける。 スーパーのレジ待ちの時、前の方の人が少し手間取ると、「どうしたんだ?」と、背伸びしたり、体を斜めにして、…

中原中也とアテネフランセ

芸能人、学者、外交官、作家、詩人などが、フランス語の私塾、アテネフランセで学んできた。詩人、中原中也(なかはら ちゅうや)もその一人だ。 汚れちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる 汚れちまった悲しみに 今日も風さえ吹きすぎる こんな詩を書い…

作家、庄司薫の夕飯

庄司薫と言っても昭和世代は知っているが、それ以降の人たちは知らないかも。学生運動が盛んだった1969年、「赤頭巾ちゃん気をつけて」という小説を出版し、芥川賞を受賞した人物である。 小僧も出版直後に読んで、世の中にはしゃれた小説を書く才能に満ち溢…