「おもてなし」は、どこの国にもある。日本だけが「おもてなし」をしているわけではない。小僧は60か国以上の国を訪問してきたが、それぞれの国に客人をもてなす儀式や食事があることを理解した。
小僧が7年近く暮らしていた北アフリカや西アフリカにも当然「おもてなし」はあった。一番のおもてなしは、羊の丸焼きだと思う。一頭、何日か時間をかけて、じっくり焼いて丸ごと出してくれる。
招待する側の主人は、小僧に小声で「メシュイを出すから、楽しみにしてくれ。だから、万障繰り合わせて来るように」と誘ってくれた。自慢するだけあって、立派なメシュイだった。一生の思い出です。
数人で囲んだテーブルの真ん中に、ドーンとメシュイが置かれる。おもむろに紳士、淑女が、焼かれた羊の一部を少しずつ手でむしり取って口に運ぶ。ジュワーと、口の中で羊の肉や脂やほのかな塩味、スパイスが拡がる。う、美味い!モロッコのメシュイは何故、こんなに美味いんだろうと、感動した。
何より、羊一頭出してくれたという主人の心意気、客への友情が嬉しい。気前がいいモロッコ人のおもてなしだ。
自然環境や経済状況が厳しいサヘルの国、ニジェールの田舎でも羊一頭、村人と食べたことがある。サヘルの国とは、サハラ砂漠の周辺に位置する国のことだ。
客人に失礼なことは、主人がケチなことだ。小僧はケチ臭いところがあるので、よく家人から注意される。出せないものは仕方がないが、出せるのに出さないのは、ケチだ。ケチは北アフリカ、西アフリカでは嫌われるから、小僧は特に注意しなくてはいけなかった。いや、アフリカだけではない、世界中どこでもケチ臭いやつは嫌われる。
おもてなしは日本だけの特許ではなく、すべての国に共通する人の心構えだ。
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