小僧とZさんは、レユニオン島の小さなホテルの中庭にある従業員用の部屋のような所に転がり込むことができた。バカンス時期でどのホテルも予約客で満室だったのだから、ラッキーと考えるべきだろう。
Zさんが「シャワーを浴びていいかい?」と聞くので「どうぞ」と答えた。モーリシャスからこのホテルまで、小僧たちは大変な一日を過ごしてきた。シャワーを浴びてスッキリしたいと二人とも考えていた。小僧より年長のZさんが先にシャワーを浴びるのが順当だ。
「おお、いい気持だ」と言いながら、Zさんが腰にバスタオルを巻きつけて出てきた。ゴルゴ13に出てくる白人の男の裸体のように、黄金色の産毛だ。
こうして小僧とZさんのレユニオン島での滞在が始まった。聞けば、Zさんはコモロに長期滞在しながら、電力関係の仕事をしているコンサルタントだった。休暇を取り、モーリシャスで過ごした後、コモロに戻る時に今回のトラブルにあったようだ。
レユニオン島で食事や買い物や散歩を一緒にしたが、実に礼儀正しいオジサンだった。フランス語が苦手のようで、交渉事は小僧が請け負った。
結局、小僧とZさんは二日ほど毎朝早くに空港に行き、コモロ行きのレユニオン航空の空席待ちをしたが、空振りが続いた。三日目にようやく席が取れ、小僧とZさんはレユニオン航空でコモロに飛ぶことになった。
このフライトには、一抹の不安があった。行き先は、コモロ諸島の島だが、フランス領のマイヨット島なのだ。小僧とZさんが行きたいのは、コモロ連合の首都、モロニだ。
Zさんがこう言った。
「ともかく、モロニの近くに行くのだから、フランス領のマイヨット島でもいいじゃないか。俺たちは一緒だ」
レユニオン航空の機内で、フランス人が話しかけてきた。事情を説明すると、「マイヨットからモロニには行けないよ」と言うではないか。
不安になる小僧に、Zさんが小僧の耳元で囁いた。
「小僧、心配するな。なんとかなるさ。俺たちは一緒だ」
こうして、Zさんと小僧の二人は、コモロ諸島のマイヨット島の空港に到着した。レユニオンもフランスなら、ここマイヨット島もフランスだ。二人は、フランスの中を旅しているのだ。しかも、ここから独立国のコモロ連合の首都、モロニに行く便は無いと機内のフランス人が言っていた。
滑走路で、Zさんと小僧は途方に暮れた。トラブル続きの旅行はついにお先真っ暗になった・・・。と、思った時、驚くべきものを見つけることなる小僧であった・・・。(この項、続く)
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