小僧はピアノ教室に通い始め、家でも宿題の練習をしている。長期間、調律をしてこなかったピアノだが、小僧の練習には支障ない。
そう思って、三週間ほどお稽古をしてきたが、やはり音楽教室のピアノの音と自宅のピアノの音の違いに気づくようになった。
「どうせ練習するなら、いい音のピアノでしたい」
こう思うのは、人情だろう。
早速、隣町の楽器店に連絡を取り、調律師の方に来ていただくことにした。そのお店には、我が家のピアノの調律の記録が残っていて、最後の調律から二十年経っているとのことだった。
人間でも、住居でも、車でも、ピアノでも、メンテナンスが必要なことは言うまでもない。いい機会だ、しっかり手入れしていただこう。
小僧は、調律の作業を初めて見たし、ピアノの内部を見るのも初めてだ。
ホコリもたまっているし、一部、サビや虫食いも見られるとのことだった。調律師の方は、ピアノの内部をきれいに掃除してから、音の調整をしてくれた。作業時間は四時間近くかかった。
作業を終えた調律師の方から、「小僧さん、「歓びの歌」を弾いて、鍵盤の具合などご確認ください」と、言われた。「歓びの歌」は遠慮して、ド・レ・ミ・ファ・ソ、ソ・ファ・ミ・レ・ドと弾いてみた。
おお、なんとクリアな音だろう。鍵盤のタッチもいい具合だ。これで、小僧はピアノレッスンをこれまで以上に熱心にやることになるだろう。
人間もピアノも、メンテナンスが大事と理解した瞬間だった。
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