かつて、フランスの紙幣に、星の王子様とアフリカの地図、作者サンテグジュペリの顔が印刷された50フラン札があった。
ユーロ紙幣の発行の後、回収されて今は使われていない。
親戚の年寄りが施設に入るというので、家の中を整理していたら、その50フラン紙幣が出てきた。
お国柄とは言え、おしゃれな紙幣である。
星の王子様、アフリカと地中海とヨーロッパの地図、それに星の王子様の著者、サンテグジュペリの顔が刷られている。親戚の年寄りは、フランス旅行で手に入れたこの紙幣をかわいいと思って、大事に保管してたと思われる。
それにしても、なぜフランスの紙幣にアフリカ大陸が大きく刷られているのか?
第一の理由は、王子様とサンテグジュペリと思われるパイロットが出会うのがサハラ砂漠だったから。
第二の理由は、サンテグジュペリはパイロットとしてアフリカ大陸の上を飛んでいたから。
サンテグジュペリは、ある時は、アフリカとヨーロッパの間を、またある時は、南米からアフリカを経てヨーロッパへ飛んでいたのだ。アフリカ大陸の西海岸沿いのセネガル、モーリタニア、モロッコに簡易な滑走路と基地を作り、郵便や書類を運んでいた。彼の著作、「南方郵便機」や「人間の土地」には、そうした仕事に従事する男たちの人生が描かれている。
紙幣には、それぞれの国の「偉人」や代表的な風景を採用することが多いが、このフランスの50フラン紙幣は一味違う。物語が流れ出てくるお札である。しかもその物語が、愛と勇気と友情の物語である。
もはや市場で使えない紙くずであるが、これからも大事に保管してゆきたい。
王子様も、言っていた。
「大事なものは目に見えない。心で探さなくては見つからない」
いろんな言葉が聞こえてくる、星の王子様の50フランである。