「ほどほどにしておくもんだよ」
これが、忘れられない映画のセリフだ。まことに日常的で、ドラマチックでもないセリフで申し訳ないくらいだが、小僧にとっては忘れられないセリフだ。
小津安二郎監督「秋刀魚の味」と言う作品に、中村伸郎と言う役者が出ているが、彼のセリフだ。
中村伸郎は小津作品では無くてはならない脇役だ。「秋刀魚の味」では、主役、笠智衆の中学の同級生で、今や二人ともそれなりの会社で重役となっている。しょっちゅう会っては、酒を飲みながら馬鹿話をする仲だ。
もう一人の同級生が出てくるが、こちらは妻を亡くし、年の離れた若い後妻をもらっている。ある日、中村がこの同級生を死んだことにして、飲み屋の女将(おかみ)をからかう。ビックリした女将に中村が言うのだ。
「女将さんも、ほどほどにしておくもんだよ」
男女の関係を言っただけのセリフで、かつ、今ならセクハラに成りかねない言葉だが、小僧には世渡りの仕方というか、生き方というか、そうしたことへの示唆に富んだセリフに聞こえた。
抑制の効いた小津映画の作風にもつながるようなセリフだと感じている。なんでも、やり過ぎちゃ駄目だ。小僧も世間を渡ってきた随所で、「ほどほどにしておくもんだよ」と自分に言い聞かせたこともある。
これからも、小僧の座右の銘は、名優、中村伸郎が「秋刀魚の味」で言った忘れられないこのセリフである。
「ほどほどにしておくもんだよ」
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