物集高量と書いて、「もずめ たかかず」、と読む。読める人は少ないだろうし、まして、物集高量がいかなる人物か、知っている人も少ないはずだ。
朝日文庫「わが家の夕めし」に、物集高量は登場している。昭和54年7月、板橋区の自宅で、出前の「ざるそば」を食べている写真だ。
昭和54年(1979年)の写真だが、この時、物集高量はちょうど百才だった。百年間何をしてきたか、私には要領よく紹介できないほど、波乱万丈の人生だった。小説を書いたり、教師をしたり、生活保護を受けたり、懸賞小説で現代の金額で一千万円の賞金を獲得したり、教え子に手を出したり、などなど。
100才を機に出版した「百歳は折り返し点」なる本は、120万部のベストセラーになった。ざるそばを食べながら、アサヒグラフの取材を受けたのは、まさにベストセラーを出した年である。この写真から4か月後には、な、なんとテレビ番組「徹子の部屋」にも出演している。
写真では、ざるそばを食べているが、記事の中で物集はこう言っている。
「いつもはこんなものは食いません。喉につっかえるとあぶないから、人が来たときだけ食べるんです。いつもは、食パンと牛乳と、メンチカツとそれからバナナ。こればっかりです」
物集にとって、「ざるそば」は、来客時の気取った夕飯だったことがわかる。長寿と食生活について、物集の人生から我々は何を学べばよいのだろうか?享年106才。合掌。
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