もうすぐ、五月だ。昭和の夕飯を記録した朝日文庫「わが家の夕めし」のなかで、俳優、志村喬(たかし)が五月に食べる夕飯は実に美味そうだ。食材の季節感、食器や盛り付けの美しさ、主人の表情、どれをとっても申し分ない。
その日の献立はこうだ。タケノコの木の芽あえ、ソラマメの塩ゆで、タケノコと里芋とワカメの煮物など、いずれも食材の季節感を大事にした献立だ。撮影は、昭和54年(1979年)5月18日となっている。
昔の人は、健康にいい美味いものを食べていたと感心する。と言ってもそれほど年月は経っておらず、たかだか40年ほど前のことである。
それにしても、和食ベースの日本の家庭料理は、たくさんの食器を使うものだなと改めて感じる。数々の食器が食卓にいい風合いを醸し出しているのだが、これを出したり、洗ったり、片づけたりするのは、大変だ。志村喬自身も記事の中で、最近は奥さんも面倒なことはしなくなり、「うまいものは外に食べに行くことにしている」と、書いている。
黒澤明監督の「生きる」「七人の侍」や山田洋次監督「男はつらいよ」の博の父親役など、数々の映画に出演した名優、志村喬氏は昭和57年2月11日、没している。合掌。
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