長い間、幻の映画と言われてきた「アサンテサーナ」が、ユーチューブで見ることが出来ると聞き、早速、視聴した。青年海外協力隊の映画である。ボランティアや援助関係者を主人公にした映画や小説は、どうしても固くなってしまいがちだ。「アサンテサーナ」をそうした堅苦しさから救ってくれたのは、特別出演の八千草薫さんの存在だ。
テレビドラマ、漫画、小説などに、日本の援助関係者らしき人物が登場することはあるが、間違いなく八千草薫さんが演じたタンザニア駐在員夫人は、最も美しい。映画は1975年公開されたが、タンザニアでの現地ロケは、その前年の1974年行われていた。
タンザニアで現地ロケ中の八千草薫さんに会ったと、エチオピアの青年海外協力隊員だった金子洋三氏が語っている。若き日の金子さんは、エチオピアで二年間の天然痘撲滅のための隊員活動を終え、エチオピアを訪問した父上と一緒にタンザニア経由で帰国した。その時、タンザニアでロケ中の八千草薫さんと遭遇したようだ。
「父はこのとき八千草さんにビールを注いでいただいたことを、懐かしそうに話していました」(JICA海外協力隊ホームページから引用)
いいお話だ。まだ、海外、それもアフリカを旅する日本人は限られていたので、現地でロケ中の映画関係者と隊員やその家族と交流の機会があったのだろう。そして、何より八千草薫さんの優しい性格が、隊員の父上に一生の思い出を与えることになったのだと思う。
最後にもう一つだけ映画に関連する情報を提供させてください。それは、「アサンテサーナ」のオープニングで、アフリカの大地を疾走する四駆を空からカメラが追いかける、その時、流れる音楽は、な、なんと渡辺貞夫さんの演奏だ!まことに、贅沢な映画であると、感心する小僧であった。
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